2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年に私の見た紅葉

万葉集には秋をうたった歌がたくさんある。次の一首もそのひとつ。一年〔ひととせ〕にふたたび行かぬ秋山を情〔こころ〕に飽かず過〔すぐ〕しつるかも 万葉集2218*最初私はこの歌の意味を「一年に一度しか訪れることのない秋の紅葉した山を見ていると飽きる…

比叡山と延暦寺散策

比叡山に初めて登ったのは小学校4年か5年の夏休み。叔父に連れて行ってもらい、京都の出町柳から叡山電車で八瀬まで、そこからケーブルカーとロープウェイを乗り継いで山頂まで。その後何回か登ったことがあるが、下から上まで徒歩でというのは大学の陸上部…

「泡鳴五部作」(その2)

前回の「泡鳴五部作」(その1)では1作目『發展』2作目『毒藥を飲む女』を取り上げた。今回はその続きとして3作目『放浪』4作目『斷橋』5作目『憑き物』を取り上げる。 『毒藥を飲む女』は田村義雄が上野駅を出て樺太へ向かうところで終わった。そして『放浪…

久しぶりに淀で菊花賞

私が初めて競馬の馬券を買ったのは1987年の菊花賞。それより以前、学生時代に京都競馬場でアルバイトをしていて、馬が走る姿を見てきれいだと思ったことがある。しかし、競馬そのものに興味はなかった。当時はまだ学生が馬券を買うのは法律で禁止されていた…

「泡鳴五部作」(その1)

岩野泡鳴といえば自然主義を代表する作家の一人。しかし、昨今では自然主義の小説を読む人は少なかろうし、泡鳴など明治文学の研究者か愛好者か、あるいはよほどの暇人でもなければ読まないのではないか。暇人である私は読んでみた。本棚を眺めていたら「泡…

夏の詩歌

酷暑がなかなか終わってくれない。手元にある詩集や歌集をパラパラめくりながら、夏の暑さを罵倒したり呪ったりした作品ってあるのだろうか探してみたが、見つからない。もともと、冬や秋に比べると夏をテーマやモチーフにした詩歌は少ない。それに、暑くて…

レマルク『西部戦線異状なし』

レマルク(1939年) エーリヒ・マリーア・レマルク(1898-1970)の小説『西部戦線異状なし』は1928年に新聞に連載され、翌29年に単行本として出版された。右翼からはドイツの前線兵士たちの思い出を汚すものであるという批判、左翼からは戦争の原因が追究さ…

夏目漱石『明暗』:先を超される男、津田

夏目漱石『明暗』は新聞連載途中で漱石の死によって中断され、未完に終わった小説である。連載188回まで書かれたのだが、そのあと何回まで続いてどういう経過をたどり、どういう結末を迎えることになるのかは誰にも分からないままに残された。 小説冒頭で主…

大津、湖西浄化センターのバラ

大津の住まいの近くに滋賀県湖南中部流域下水道事務所湖西浄化センターという長ったらしい名前の下水処理場がある。ここにはバラ園があって、結構有名らしい。年に2回、5月と10月にそれぞれ12日間ずつ一般公開され、今年の5月は17日から28日まで。先日自転車…

あと何回の晩餐?

3週間ほど前のこと。関ケ原の古戦場でもぶらついてみようかとJRで出かけたところ、家を出る時は何もなかったのに途中、電車内で気分が悪くなりだした。最初は、これでは予定していたレンタサイクルでの散策は無理なようだから景色を眺めるだけにし、昼御飯で…

一乗谷朝倉氏遺跡

桜を見に福井へ。目的地は一乗谷の朝倉氏遺跡。3年前の桜の季節に初めて訪れて、とてもいい所だと思った。いちおうは観光スポットではあるが、とてものんびりできる。昨年の10月には一乗谷朝倉氏遺跡博物館もオープンし、これも見る価値がありそう。3年前に…

小浜で考えた北陸新幹線敦賀からの延伸問題

10日ほど前、青春18切符を使って敦賀、小浜を歩いてきた。湖西線の比叡山坂本から敦賀までの電車は予想していたのとは違ってかなりの混み具合。座席はほぼ詰まっている。大きめのキャリーバッグなど持った人もちらほらいて、日帰りではなさそうである。目的…

若きウェルテルは何を悩んだのか?

一番有名なドイツの文学者といえばゲーテだろうし、そのゲーテの一番有名な作品といえば『若きウェルテルの悩み』か『ファウスト』のどっちかだろう。でもこれらを読んだことのある日本人はどのくらいいるのだろうか。正宗白鳥が次のように書いたのは1904年…

2022年バイロイトの『神々の黄昏』

近頃ご無沙汰気味のクラシック音楽を聴こうかという気になって、年末から年始にかけ、NHKオンデマンドの「プレミアムシアター」で過去の番組を興味のおもむくままに見てみた。そのなかにバレーがいくつかあり、これがなかなか楽しい。ベートーベンの『第9』…