コロナウイルス第4波?

 和田アキ子がラジオ番組「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」で次のように発言したと報じられている。(「スポーツ報知」3月27日)
 「番組で和田は、首都圏1都3県の緊急事態宣言の解除で感染者が再拡大していることを受け、東京都の小池百合子知事が26日に都庁で〈東京の場合、2週間後は1000人にいってもおかしくない〉と警戒感を強めた発言に触れた。この発言に和田は〈私に言わせれば、言うだけ言って、ウチら手洗いしているし、消毒しているし、うがいしているよ、マスクしているよ。何なの〉と憤りを露わにした。さらに〈経済動かすためには、しょうがないけど、わかりきっていることじゃない? 人が動けば感染の確率が高いって〉とし〈だって言っていることがおかしいもん。密を避けるため、感染予防のためにって、じゃあ聖火ランナーやるなよ〉と訴えた。続けて〈ごめんなさいね、走っている方には申し訳ない〉とし、〈辞退増えてるもんね。密を避けるって言ってGoToイートが始まるかもわからない。何を言うてはるのか分からへん〉とコメントしていた。」
 和田アキ子の言っている事は変哲もない事といえば変哲もない事、愚痴といえば愚痴ではあるが、現在の国民の最大公約数的な気持ちを率直に代弁したものであり、深い分析や専門的知見なんかとは関係のないぶん、とても分かり易い。政治家や専門家はタレントの無責任な放言垂れ流しとして歯牙にもかけないだろうが、私は素直に共感する。
 ほんとうにそうなのだ。マスク、うがい、手洗いと、私たちは個人的にできることはやっている。不要不急の外出は控え、密を避けている。飲食店の自己犠牲を伴う営業時間短縮や感染防止対策は涙ぐましいほどである。これ以上自覚と自粛を呼びかけられても、国民ひとりひとりができることはもう何もない。あとは政府と行政の施策にかかっている。一朝一夕にウイルスを封じ込めるような手段はありえないにしても、できるだけ有効な対策を講ずるのは政治の責任である。ところが、あの「Go To トラベル」「Go To イート」キャンペーン。加えてオリンピック・パラリンピック開催への固執。これらが人と人との交流や接触を構造的に増長させるものであって、密を避けるのとは逆のものであることは子供でも分かる道理である。感染防止対策を十分に取りながらなどという枕詞を並べても、密を生み出すという基本的な性格に変わりはない。一時的に飲食業界や旅行業界を活性化したとしてもコロナ感染が拡大すれば結局はより大きなダメージを招き、角を矯めて牛を殺すことになりかねないというのが当初から現在までの私の感想である。去年7月に小池東京都知事がこのキャンペーンを冷房と暖房を同時にかけるようなものと呼んで揶揄したのを聞いたときは、ズバリ核心をついている、言い得て妙だと感心した。
 ところがである。その小池知事も2ケ月後には「Go To トラベル」推進派へと変身(変心)。感染者が多いことを理由に当初このキャンペーンから対象除外されていた東京都が加えられることについて記者から質問され、次のように答えている。「〈Go Toトラベル〉でありますけれども・・・東京が対象に加わりますと、経営が厳しい都内の観光関連事業者にとりまして、事業の回復などにはずみがつくのではないかと考えております。また、都民の皆さんも待ち望んでおられると思います。とはいえ、外出される際は、くれぐれも感染防止策に万全を期していただきたい。また、〈Go Toトラベル〉による観光施策が円滑に進むように、東京における感染防止対策などについて、国と協力して発信をしていきたいと考えております。」(2020.09.11 記者会見)。なんだ、小池さん、あなたも冷房と暖房を同時にかけているじゃないですか。ほんとに、何を言うてはるのか分からへん。
 どうしたらいいのだろう。コロナを抑え込むという観点だけでなら社会的活動、経済的活動を全面的に停止すればよい。日本をしばらくお休みにするのである。もちろんこれは不可能。経済をストップさせるわけにいかないことぐらいは私ごとき者でも理解している。経済活動の維持ないし活性化は必要だし、そのためには人と人との交流、出会いは不可欠。矛盾はいかんともしがたい。人間が外出することを止められないのであれば、コロナウイルスの外出を阻止するしかない。つまり、ウイルス感染者が外へ出かけ、他の人々と接触するのを止めるしかない。発症した人は外出どころではないのだから、問題は無症状のままウイルスを持ち歩く人である。「健康な」無症状者によるウイルス拡散をどう防ぐかが肝要になってくる。そのために必要な処置としてはPCR検査の徹底以外にないのではないか。厚労省資料によれば昨年2月18日から今年の3月27日までにPCR検査を受けた人は10,007,344人で、総人口の1割に満たない。何らかの症状の現れた人か、医療現場や介護施設、接待を伴う飲食店やイベント会場など、クラスターの発生する危険性の高い場所で働く人が中心なのだろう。対象者を拡大して健康な人にもチェックをかけることはできない相談なのか。同じ厚労省資料には現時点での日本全国全体の1日のPCR検査能力は175,200件分だとの数字が挙がっている。これ、10倍くらいにならないのだろうか。日本居住者全員検査というのが理想だとは思うが、それはあまりにも現実離れしているというのであれば、職場や通勤、就業形態などを考慮した優先順位をつけて実施していくのはどうだろう。無症状の人が数千円以上の自己負担で自発的に検査を受けるとは考えにくい。ならば無料の検査を、とりあえずは毎日公共交通で通勤せざるを得ない人たちあたりまで対象を広げて実施することぐらい政府の主導でできないものなのか。
 2月末に緊急事態宣言が解除された大阪や兵庫などでは感染者数の増加がみられ、3月30日の大阪では432人まで増加している。さらに増えることは火を見るよりも明らか。この21日に宣言の解除された首都圏でも関西圏の後追いをして、東京の感染者数が近々4ケタになり、全国的に第4波襲来も時間の問題とおそらく誰もが感じているはず。政府は3度目の緊急事態宣言で事に当たるつもりなのか。ワクチン接種の始まっていることに望みをつないでいるのか。多分そうなのだろう。もちろんワクチンはワクチンで結構なことである。ただし、私みたいに外出する必要のない老人よりも若い人を優先すべきだと思うけれど。それに加えてPCR検査の対象を飛躍的に拡大する措置を取るべきだと思う。以上、まったくのド素人が真面目に考えた新型コロナウイルス問題。