Windows8.1がサポート終了だとか

 先日、パソコン画面に突然、次のようなメッセージが現れた。
「このバージョンのWindowsはサポート終了に近づいています。2023年1月10日はMicrosoftWindows8.1を実行するPCのセキュリティ更新プログラムと技術サポートを提供する最後の日です。私たちは今、あなたの忠誠に感謝し、あなたが次のことに備えるのを手伝うためにリーチします。」
 それでMicrosoftのサポートに関するサイトを開くと、「サポート終了とはどういう意味ですか?」以下、種々説明の項目があるが、その一つに「新しいコンピューターを検討する必要がある理由」というのがあり、次のように説明されている。
「もともとWindows 8.1で構築された PC は、約 10 年前のテクノロジを使用して設計されています。 新しい PC に移行すると、使い慣れたWindowsの多くの側面が見つかりますが、10 年前には利用できなかった重要なソフトウェアやハードウェアのイノベーションや機能も備えています。」 
 私の現在使っているパソコンは2012年秋モデルで、使用歴10年。OSはWindows8.1。現在も問題なく快適に動いている。私がパソコンでやることといえば、ニュースを読む、地図を見る、写真を保存する、文字を書くぐらいで、映画を見るとか音楽を聴くとかゲームをするとかは一切しない。「10 年前には利用できなかった(が、現在では普通に使われている)重要なソフトウェアやハードウェアのイノベーションや機能」は私には関係も関心もない。現在使用中のパソコンで私のやりたいことはすべてできるのである。個人的にはパソコンを買い替える必要などまったくないし、そのつもりもないつもりではある。しかし、すっきりしない。このまま使い続ければいいのじゃないかと決め込みつつも、何かしら不安が心のどこかにわだかまる。有償でOSだけを新しくする方法もあるようだが、「古い」パソコンがそれに対応できるものやら心もとない。セキュリティ更新プログラムと技術サポートが得られなくなれば何か困ったことが起きるのだろうか。起こりそうでもあり、大丈夫そうでもある。運まかせなのか。よく分からない。Windows8.1を使い続けることによって生じるかもしれないトラブルに対してMicrosoftが責任を取るつもりはないと言っていることだけはよく伝わってくる。
 それにしても、上に引用したメッセージはけったいな文章である。2番目のも少し日本語としてこなれていないが(「多くの側面が見つかります」)、1番目のは奇妙な文章というべきか。私はこれまでWindows8.1を使ってきたことに対し忠誠を感謝されているのである。私にはそんなつもりは全然なかったのだけれど、Microsftにとって私は忠誠なる何者かであったらしい。ひょっとして家来?
 「リーチ」という語も最初よく分からなかった。わたしはMicrosoftと麻雀をしているわけではない。なんでリーチされるのか。手元にある国語辞書をいくつかあたってみても意味不明。英和辞典のreachの項にようやく該当するらしい意味を見つけた。「〈人が〉手〔腕など〕を伸ばす」から比喩的に「援助の手を差しのべる」ということらしい。しかし、私の日本語語感ではそのような意味の「リーチ」は日本語のなかには存在しない。そう思うのは多分私だけではないはず。こんな英単語を不用意に日本語として使う必要はなかろう。いや、使ったら駄目なのではないか。これで通じると考えているのだろうか。ある種の傲慢さ(英語帝国主義?!)をさえ感じる。
 奇妙な文章の原因は何なのか。おそらく英文からの翻訳にあるのだろう。「提供する最後の日」という言い方も日本語らしくない。まず英語による原文があって、それをそれぞれ世界各地の言語に翻訳したのだろう。その日本語版が今見ている文章。翻訳は自動翻訳ソフトによるものか、それとも人の手によるものか。あるいは自動で翻訳されたものに人の手が加わったのか。翻訳ソフトの現状を私は知らないが、100%信頼できるレベルにはないはずである。そんなレベルにあるとすれば同時通訳者や翻訳者が大量に失業してもおかしくないが、そんなニュースは聞いたことがない。原理的にも、ソフトだけで翻訳完了という状態は将来的にもありえないと私は思っている。ソフトが翻訳したものに人が手を加える以外に方法はないのではなかろうか。今回の文章もきっとそれ。だとすれば、疑われるべきは最終チェック者の日本語力ということになる。どんな人がやったのだろうと詮索してもつまらないから詮索しないが、本当にけったいな日本語文である。まさかとは思うが、もしかして翻訳ソフトにまかせっぱなしで、人間によるチェック無しという可能性もあながち否定できない。
 この10年間に進歩したソフトやハードの恩恵を私は感じないし、享受するつもりもないのだけれど、もし100%信頼できる翻訳ソフトができたらぜひ使ってみたい。これだけは別である。いや、100%はあり得ないだろうから、90%でいい。細部のニュアンスや方言差には歯が立たなくとも、標準的な言葉使いならきちんと翻訳してくれるソフトが動くなら、新しいパソコンに即日買い替えたいものである。