若きウェルテルは何を悩んだのか?

一番有名なドイツの文学者といえばゲーテだろうし、そのゲーテの一番有名な作品といえば『若きウェルテルの悩み』か『ファウスト』のどっちかだろう。でもこれらを読んだことのある日本人はどのくらいいるのだろうか。正宗白鳥が次のように書いたのは1904年…

2022年バイロイトの『神々の黄昏』

近頃ご無沙汰気味のクラシック音楽を聴こうかという気になって、年末から年始にかけ、NHKオンデマンドの「プレミアムシアター」で過去の番組を興味のおもむくままに見てみた。そのなかにバレーがいくつかあり、これがなかなか楽しい。ベートーベンの『第9』…

もみじ三昧

2年前の秋に馬篭妻籠へ旅行したときのこと。馬篭でハイキングをしていた地元の人と立ち話をしていて、京都から来たと言ったら、京都にはいっぱい見る所があるのに何をわざわざここまで来るの、と不思議がられた。でも、広々した山の眺めは京都の景色とは違い…

樋口一葉『たけくらべ』

樋口一葉は21篇の小説を書いた。筑摩書房『樋口一葉全集』には小説として22篇が収められているが、そのうち『裏紫』は未完なので、完成したものとしては21篇ということになる。『たけくらべ』『にごりえ』『大つごもり』はこれまでに読んだことがあるが、今…

清沢洌『暗黒日記』

何年も前、NHKラジオ「朗読の時間」だったかで清沢洌〔きよし〕の評論が取り上げられていた。その時初めて清沢洌という人のことを知り、興味が湧き、岩波文庫で『暗黒日記』と『清沢洌評論集』を買い求めた。他にも読みたい本があって、この2冊にはなかなか…

Windows8.1がサポート終了だとか

先日、パソコン画面に突然、次のようなメッセージが現れた。「このバージョンのWindowsはサポート終了に近づいています。2023年1月10日はMicrosoftがWindows8.1を実行するPCのセキュリティ更新プログラムと技術サポートを提供する最後の日です。私たちは今、…

『赤と黒』(2)、レナール夫人の「正しい」不倫

『赤と黒』は大きく第1部と第2部からなり、第1部ではフランスの架空の町ヴェリエールを舞台に、ジュリアン・ソレルと、この町の町長レナール氏の妻との恋が語られる。小説全体を通じての主人公はジュリアン・ソレルなのだが、第1部においてはレナール夫人の…

19世紀フランス小説を読みながら考えた安倍元首相国葬問題

小説を読んでいると、本筋とはあまり関係がなく、従ってあまり重要でないくせに素通りすることができず、立ち止まって考え込んでしまう箇所に出くわすことがときとしてある。読書時点の現実世界で問題になっている事柄に触れるような箇所が小説世界からひょ…

[『赤と黒』(1)、ジュリアン・ソレルの「父親たち」

ずっと昔、大学でフランス語の授業を受けていたときのこと。先生が脱線して話題はいつしかスタンダール『赤と黒』へと流れていった。その時に小説そのものについてどんなことが話されたかは忘れたが、『赤と黒』を専門に研究する「『赤と黒』屋さん」が最近…

上御霊神社祭礼2022

昨日5月18日は、京都、上御霊神社の祭礼の日。3年ぶりに神輿が出るというので京都まで見に帰った。以下はその写真。 加茂街道で。3時半ごろ。ほんとうは神輿を担いで「エライヤッチャ、エライヤッチャ」とやっているのを撮れたらよかったのだが、そのタイミ…

なんで、私が新潟に

GW明けの人出も少ない頃を見はからって新潟へ出かけた。2泊3日。新潟に親戚があるわけでもなく、知人友人がいるわけでもない。お参りしたい墓があるわけでもなく、ぜひ見たい場所があるわけでもない。じゃ、なぜ出かけたかというと、JALカード(クレジット…

車谷長吉

車谷長吉という小説家に興味を覚えたのは2015年、彼が亡くなったときのことである。死亡記事のなかで、彼が朝日新聞の人生相談「悩みのるつぼ」で出した答えが紹介されていて、それがちょっと普通ではなく、この人はおもしろい人だなと思った。同時に、恐ろ…

カミュ『ペスト』

最近、アルベール・カミュ『ペスト』がよく読まれているらしい。2年前の話だが、新潮社文庫版の翻訳は2020年2月中旬に4千部を増刷し、さらに1万部の増刷を決めたとか。同社の広報担当者は「タイミングからみて、新型コロナウイルスの影響としか思えない。全…

中原中也と安原喜弘

去年の10月山口市湯田の中原中也記念館を訪れた時、「君に会ひたい。―中原中也の友情」というテーマで展示が行なわれており、8人の友人についてそれぞれコーナーが設けられていた。そのなかで私が知っている名前は大岡昇平、小林秀雄、河上徹太郎だけで、他…

ボートレースで死者が出たが

昨年の12月19日、ボートレース1年の締めくくりであり最大の大会である「ボートレースグランプリ」の優勝戦では1号艇峰竜太が転覆し妨害失格、後続3艇もそのあおりを受けて転覆失格、走り終えたのは2艇のみというとんでもないレースになってしまった。年明…

坂本雪景色 2022.01.14

夜のあいだに雪が降り、庭のグレープフルーツとレモンの木も白くなりました。 徐々に晴間も出そうなので、雪がとける前にカメラをもって散歩。 坂本雪景色でした。

雪の日の雪の詩鑑賞

この年末は近畿でも北のほうはよく雪が降っている。滋賀でも大津坂本あたりではうっすらと地面が白くなる程度だが彦根や米原では数十センチの積雪。年末の掃除は暖かい日を選んで少しずつやって今はすっかり終えているし、競馬の有馬記念もボートレースのグ…

なぜか山口

とくに意図はないのだが、今年は2回も山口県に出かけた。春には角島、秋吉台・秋芳洞、秋には湯田温泉から瑠璃光寺。昨年の1月には小倉競馬場に行った際に下関に泊まっているので、それも入れれば、この2年間に山口の土を3回踏んだことになる。ちなみに、私…

比叡の麓に秋が来た

紅葉が見頃を迎えたので、散歩にカメラを持って出かけました。 坂本界隈には石のお地蔵さんが集められているのをよく見かけます。 西教寺と日吉大社とは県道47号線が結んでいて、1kmほどですが、県道と並行している山側の道が散策にはぴったり。西教寺の総…

坂本城の石垣跡が姿を現す

琵琶湖の水位が低くなり、明智光秀が築いた坂本城の本丸石垣遺跡が姿を現した(前回は1994年)というので、撮影してきました。石垣という面影はありませんが、これが本丸石垣の南東の角だとか。場所は、坂本城址公園の中ではなく、その北側になります。(撮…

マキャヴェリ『君主論』を再読して

マキャヴェリ『君主論』はだいぶ昔に読んだことがあるが、あまり印象に残っていない。魅力的な思想とは思わなかったのであろう。先日行われた自民党の総裁選などを見ていると、マキャヴェリズムはいまだに生き続けていて、政治の世界ではなおも実践されてい…

都道府県魅力度ランキング?

ブランド総合研究所という民間シンクタンクの公表した「地域ブランド調査2021」というレポートがちょっとした話題になっている。あるいは、ちょっとした物議を醸していると言っていいかもしれない。このレポートのなかに「都道府県魅力度ランキング」という…

自民党総裁選が近づくが

菅首相が「コロナ対策に専念したいという思いの中で、総裁選には出馬をしない」「コロナ対策と選挙活動、莫大なエネルギーが必要なのでどちらかを選択すべき」という奇妙な理屈で自民党総裁選に出馬しないと表明したのが9月3日。それまで総裁選に意欲を見せ…

80代で逝った3人の方々

ついこのあいだ、8月中旬に80代のタレント3人が立て続けに亡くなった。ジェリー藤尾、笑福亭仁鶴、千葉真一。それぞれの本業は歌手、落語家、俳優。享年は81才,84才,82才。かつてテレビに慣れ親しんだ世代にとっては本当に懐かしい人たちである。それぞれ…

オリンピック閉会から1週間経ったが

オリンピックが終わって1週間が経った。最初の頃は私も卓球混合ダブルス伊藤水谷や柔道阿部兄妹の活躍には、やったね!という感慨も湧いたが、以降は、暇にまかせてテレビのスイッチを入れても退屈することが多く、10分ほどして切るといったことの繰り返し…

東京オリンピックが開催したが

今日は7月28日。東京オリンピック開会式から6日経過し、日本の金メダルが昨日までで10個となり現在国別のトップ。日本連日の金メダルラッシュという文字もメディア上では踊っていて、やっぱりオリンピックやってよかったのではないかといった雰囲気がないこ…

医学検査の精度って?

NHKオンデマンドで『ハードナッツ!』というドラマを見た。主人公難波くるみは数学専攻の大学生で、刑事の伴田とコンビを組み、難事件を数学的思考で解決するというコミック仕立ての作品で、なかなか楽しめる。そのなかで、サイドストーリーとして、伴田が健…

ステークホルダー and ファクト

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は競技会場における酒類提供のあり方について6月21日には検討中としていたのを、23日に急遽、中止にすると決定した。これは街なかの飲食店などでは一般に酒の提供自粛が厳しく要求されているなかで、オリン…

「五月雨の降りのこしてや光堂」

もう2ケ月近く前になるが、平泉に行ってきた。これまでは東京を超えて東北まで足を延ばすことはほとんどなかったのだが、今回はなんとなくちょっと遠出をしてみようかと考え、角館、会津若松と合わせての2泊3日東北物見遊山を計画。平泉は40数年ぶりで…

東京オリンピックが可能という理屈は可能か?

東京オリンピック・パラリンピックについてIOCや日本の組織関係者のトップの人たちは相変わらず開催の姿勢を崩さず、バッハIOC会長などは私たちの神経を逆なでするような発言を繰り返している。とりあえず現時点では、この人たちが事態を冷静に直視し、日本…